少年と私~その② | * 僕は駆け出し作家 *

少年と私~その②

* 1 * コチラ


* 2 *


辺りを見回すと、数人のカメラマンやエセカメラマン、初々しいカップルや人目もはばからずイチャつくバカップル、犬を連れて散歩している夫婦、そしてサックスをケースに直している少年がいた。少年というには語弊があるかもしれないが、私の歳からすると、やはり青年というよりも少年なんだ。



私は思わず少年に話しかけてしまった。というのも少年を見て昔の思い出がフラッシュバックしたんだ。
かつて、私の元カレ(一応、元とつけておく)もサックスを演奏していた。ただの趣味と言っていたけど、本当のところは分からない。素人目からじゃその実力も定かではないが、誰が聞いても、『上手い』『カッコイイ』と声をあげていた。私もカレがそう言われているのを聞いて満更でもなかった。いや、かなり気分が良かった。
カレとは五年前に別れた。それは永遠のお別れ…。どこにでもあるような車の事故で、意識不明の重体となり、すぐさま病院に担ぎこまれたけど、そのまま意識を取り戻すことなく他界した。そんなどこにでもあるような結末。でもそれが大切な人の身に襲いかかるとは、想像もつかなかった。
当然のことながら、しばらくはカレの死を理解できなかった。理解した後は整理ができなかった。整理ができたと思ったら、また理解ができなくなっていた。

何でカレが死ななきゃなんないの? 世の中には死んだ方がいいような人間なんていくらだっているのに。カレをはねたドライバーとか。。。

だけど、次第にそうやって責めるのにも疲れていった(といっても、一生許すことはないが)。

何かしようと思い、カレに伝えたかったことを紙に書いてみた。何枚も何枚も書いたけど、全部くちゃくちゃに丸めて捨てるだけだった。そうして、その紙の数だけ頭と心がパンクしていった。
結局、断ち切ることも、割りきることも、乗り越えることもできていなかった。




続く…