少年と私~その③ | * 僕は駆け出し作家 *

少年と私~その③

* 1 * コチラ


* 2 * コチラ


* 3 *


そう、私はそんな気持ちを振りきる為に、無理矢理、好きな仕事を見つけたのかもしれない。だけど、逃避の先にある夢なんて偽物はすぐに消える。ただの日々の泡。ほの暗い水面から現われて、プクっと膨れたかと思うと、すぐにパンッとはじけて消える。


あれ以来、恋愛もしていない。どうしてもする気になれない。やっぱり好きになるのが怖い。失いたくないものは、もぅつくりたくない。また…、もしかして…、そんなことが頭をよぎる、というより駆け回る。突然トラックの前に飛び出して、『僕は死にましぇん』なんて言ってくれる人もいないんだ(そんなことされても困るけど)。
カレが残したものは色褪せない想い出と、絶望的で断続的な悲しみ。ただそれだけ。そして私はそんな障害物に阻まれて、ちっとも前に進めないままでいる。




ココには、カレに連れられて何度か訪れた。沈む夕陽とカレを眺めつつ、波とサックスの音色によいしれては、ゆっくりと流れる時間を感じていた。
今思う。変わりゆく環境の中では、時を同じように感じることができないのかもしれない。あの頃みたく、ただ身をゆだねていることができる時間は、あの瞬間に用意された特別なものなんだろう
でもそのことには、みんな過ぎてから気付く。惜しいな。分かっていればもっと大切に過ごすのに。ん? だったら今もそうなのかな? いつか気付くのかな。ほら、やっぱりその時は分からない。



続く…