豊風と僕~その② | * 僕は駆け出し作家 *

豊風と僕~その②

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「とりあえずそやな、分かり易いように結論からいこか。まずな、お前はもうこっち側の世界にきてもうてん」豊風はこっちこっちと大袈裟に両手を振った。

「分かるな?」
僕が『全っ然分からん』と言うと、豊風は「どうせそう言う思たわ」と勝ち誇った顔をする。なんだか腹立たしい。
「よっしゃ、ほなもっと分かり易く言うたる」
僕ははじめからそうしろよと思う。
「要はな、死んだんや。お前は」
『死んだ?』
「そや。よー思い出してみぃや」
『はぁ!? 何を言うてんねんな。じゃあここにおる俺はどっから…』そこで僕はハッとする。
「おっ、思い出したか」
『あっ、いや…』そう言えば、僕はさっき車に跳ねられて。そして…どうなったんだ?
「そんで死んでもうたんや」豊風は僕の心を見透かしたように言う。
「でもな、死んだ言うてもただこっち側に来ただけや、みんな―」僕は豊風の言葉を遮る。『死んだって、あの事故で?』
「まだ言うてんかいな、話進まんがな。そやそや、その事故でや。病院運ばれたけど、そのままお陀仏や。まぁどうせそんな感じやろ」
『そんな感じって…。ていうか、そもそもはじめから気になってたけど、自分なにもんや?』
「俺の自己紹介は今度でええやろ。まぁな、言うてしまえば、あっち側と向こう側をこっち側で繋ぐ役目や。俺は素行の悪い奴やったからようさん繋がな向こういかれへん」
あっち? こっち? 繋ぐ? 何言ってんだ? 混乱する僕を構わず豊風は続ける。「お前が死んだ理由は知らへん。でもな、向こう側行く前に一回だけあっちに戻れるんや。なんかやり残したことあるか?」

これは夢か? 僕はさっき跳ねられて、気を失って、いま夢を見ている。

『なんや、夢か』
「はいベター。お前ベッタベター」豊風は鋭く僕を指差す。
「まぁはじめはそう思うわ。俺も思たもん。でもな、永遠にその夢…覚めへんで。まぁ、しばらくほっといたるわ。いつか分かるわ。でも別に悲しまんでええからな、向こう側行ったらまた始まるから」
『始まるって何が?』
「いわゆる第二の人生ってやつや」豊風はイェーイと親指をたて、僕の肩を叩くと、その勢いで空高くにフワリと舞い上がった。
『えっ、ちょっ―』
豊風は驚き眼の僕を尻目に「ほなまた来るわ」と言い残し、そのまま空の彼方へ消えていった。
『えぇ…、どうなってるんよ?』
僕は何も理解出来ず、ただただ呆然としたまま、果てしなく広がる空をずっと見ていることくらいしか出来なかった。
死んだ? 俺が? なんで? まさか。




続く…